流域の小さな物語を巡る TEGA-NUMAP

人と手賀沼のあいだで生まれた、幾つもの小さな物語。 流域を巡り、その想いに触れる地図。 @teganumap
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わたなべ

手賀沼流域を歩いていると、ふと視線の先に、細長く続く田んぼの奥行きに気づくことがあります。水と林が近く、田んぼと樹林が切れ目なくつながっている場所。エグチライスファーム代表、江口さんが出会ったのは、そんな「谷津田」の風景でした。この場所では、毎年サシバが姿を見せます。田んぼでカエルを捕らえ、すぐに近くの木立へ戻れる谷の幅。人がつくってきた農の風景が、結果として鳥の暮らしとも重なっていたことを実感できる場所です。 江口さんは、この谷津田のあり方を知ってもらい、関わり続けることを選びました。日々の風景を写真で伝え、農業体験を開き、人が田んぼに足を運ぶ機会をつくる。そして近年、この場所で栽培期間中に農薬を使わない稲作にも挑戦しています。 サシバの名を冠した米「サシバ・ブラン」は、そうした関わりの延長に生まれました。米として食べられ、マッコリとして醸されることで、谷津田の風景を守ることが、“商品”というかたちで私たちの暮らしとつながります。田んぼ、鳥、人。どれか一つを主役にするのではなく、関係そのものを続けていく。エグチライスファームの取り組みは、手賀沼流域での農のあり方を問いかけているようです。(渡辺れい) 【関連URL】エグチライスファーム サシバ・ブランとは サシバ・ブランの紹介記事(朝日れすか)サシバ・ブランの紹介記事(まちっと柏)

北側に斜面林を背負い、南側に水田と手賀沼を見渡す土地に惹かれ、この地で暮らし始めた富沢さん。ちょうど定年を迎えていたこともあり、この豊かな環境の中で何か活動できないかと考えていた時に出会ったのが「手賀沼トラスト」でした。当初は限られた農地で有機無農薬農業を実践する「農教室」だけでしたが、現在では、お困りの農家さんを見かねて請け負った遊休農地の活用や、根戸城址の雑木林の手入れまで活動が広がっています。そんな広大な面積の管理も、毎週50人ほどが集まり、手際よく進みます。ベテランから新人まで粒ぞろいの顔ぶれ。手押し耕運機をうっとり眺める、よちよち歩きの男の子の姿もあります。農家でも地主でもないNPOだからこその関わり方で、見えない境界で区切られた土地をパッチワークのようにつなぎ合わせています。そこでは、メンバーそれぞれの「好き」を活かしたさまざまな活動が生まれ、どこかに自分の居場所を見つけることができます。このコモンズがいつまでも続いてほしい——「義を見てせざるは勇無きなり」から始まった富沢さんの思いは、手賀沼のほとりで、人と土地をゆるやかに結びながら、静かに広がり続けています。<関連URL>手賀沼トラスト ホームページ https://teganuma-trust.org/手賀沼の案内人No.53(2022年8月) https://teganumaweekend.com/report/guide_053/チイコミ(2023年10月) https://chiicomi.com/press/2030257/
やまざき

日秀の畑で育った小麦が、石臼の上でゆっくりと粉になっていく。小麦を育てるのが天候に左右されるのはもちろん、それを挽いて粉にするのも、日によって時間を変えるほど繊細な作業です。その小麦から生まれる品々は、ピタパンサンド、おやき、蒸しまんじゅうなど、季節ごとに姿を変えます。「石臼と麦」店主の相澤翼さんは我孫子出身。東京での暮らしを経て、農業を始めるのをきっかけに、妻の琴美さんとともに自然の豊かさと住みやすさの間にあるこの土地へ戻ってきました。野菜農家は多いからこそ、あえて小麦を選んだといいます。米についで食卓に欠かせないのに、輸入に頼る印象が強かった作物を、自分の手で育ててみたいと思ったそうです。湖北台にある夫婦二人三脚で営むお店は、我孫子でも美味しい小麦が育つことを知ってもらい、自給農業に興味を持ってもらえたら、という想いで営まれています。二毛作で育てている小豆を使って作ったごまあんまんに、私は惚れてしまいました。食べて大地の恵みを感じる。そんな体験は多くありません。それを小麦から感じるとは思ってもいませんでした。体の奥にすっと風が通るような感覚に、自分が生きていることをふと実感しました。(山崎 光明) ホームページ https://mugioyatsu.com/index.html

手賀沼の干拓の記憶を今に伝える旧井上家住宅の隣に、和Cafe TSUMUGIはあります。木の温もりに包まれた和モダンな空間には、私たちがどこかに置き忘れてきた「ゆっくりした日常」に触れ直すような、穏やかな時間が流れています。まるで昔からここに在ったかのようです。 この場所を営む長田貴行さんと佐々木美保さんは、旧店舗を立ち退きをきっかけに紹介された、この場所を気に入って移転してきました。旬の恵みや地元の食材を使った野菜たっぷりのワンプレートは、仕入れによって姿を変え、調味料までも手作りされているほど手間を惜しまない一皿です。スパイスの調合にこだわっている私も思わず唸ってしまうほど。 マルシェや地元の方による講座なども開催されていて、地域交流の場にもなっています。畳のスペースで我が家のように過ごす家族連れの姿を眺めていると、急がなくてもいい時間の中に、人と土地との静かな関係が息づいていることに気づかされます。ふと毎日をこんな風に過ごせたら、そんな思いを持たずにはいられませんでした。(山崎 光明) _【店舗URL】https://wa-cafetsumugi.com/
はやし

春には手賀沼から作業小屋前の水路に産卵を控えたコイや雷魚が遡上し、夏にはヘイケボタルがやわらかな光を放ちます。ここには、かつて手賀沼一帯に広がっていた里山の原風景が息づいています。一歩足を踏み入れると、日常の喧騒が遠のき、静けさに包まれた別世界が広がります。小鳥のさえずりやカエルたちの合唱、風に揺れる木の葉の音――それらがやさしく心と身体に染みわたり、自然と深呼吸したくなる場所です。 東京ドーム7.8個分もある、かつて荒れ果てていたこの地も、谷津守人と呼ばれる多くのボランティアの手によって2002年から保全が進められ、生物多様性豊かな里山へとよみがえりました。この地域でもほとんど見られなくなったヘイケボタル。氷が張るような寒い冬の水辺で命をつなぐニホンアカガエル。谷津守人は、そんなかけがえのない自然を、次世代の子どもたちへ手渡したいという想いで、毎週保全活動に汗を流しています。子どもたちは田んぼで泥だらけになりながら米づくりの大変さを知り、いのちあるものの尊さに触れていきます。 未来へと受け継いでいきたい――そう心から思える、大切な場所がここにあります。(林 和史)_【URL】保全団体「あびこ谷津学校友の会」HPhttps://www.yatsu-musium.com/yatsu-musium/ 【URL】我孫子市公式サイト「谷津ミュージアム」https://www.city.abiko.chiba.jp/event/shizennonaka/yatsu_museum/goannai.html
のなか

園主の河野洋徳さんは、少年時代をフランスや韓国で過ごし、帰国後は我孫子で暮らしました。自然豊かな環境は、彼の感性の土台になっていたそうです。大人になり、飲食店を多店舗経営し多忙を極めていた頃、ふと心に浮かんだ「天然はちみつのパンケーキ」が、養蜂を始めるきっかけでした。庭先で独学の試行錯誤を重ねるうちに、意識は次第に「5人の子どもと過ごす時間」や「限りある命で本当にしたいこと」へと向かい、養蜂家の道へ。一度は都内に拠点を移したものの、再び我孫子へ戻ったのは、手賀沼周辺の豊かな自然が、心に残っていたからでした。現在は、はちみつの採取・販売、イベント参加に加え、2025年には区画貸しの市民養蜂園「Hachi Base」を開設。養蜂をより身近なものとして体験できる場づくりにも力を入れています。「みつばちは本来、穏やかな生きもの。眺めるだけでも心が和らぎますし、生物多様性の維持にもつながります。養蜂やはちみつのおいしさを体感してもらって、“一家庭に一養蜂箱”が当たり前になるといいですね」見学は随時募集中。みつばちの羽音に耳を澄ませながら、深呼吸したくなる時間が、ここにはあります。(野中真規子) 【URL】https://www.instagram.com/abiko__apiary/

乗馬競技日本一の経歴を持つ吉永さんは「誰もが生きやすい社会に」との思いで、馬を活用した教育やセラピー、企業研修を展開。「オルタナティブスクール ラ・ルース」では学校に行かない選択をした子どもや障害を持つ子どもたちを受け入れ、馬の世話や乗馬などを通して体力や自立心、思いやりの心を育みます。マルシェの開催や地域イベント参加など社会経験を積む機会や、手賀沼でのエビとりや散歩で自然を感じる時間も。生きていくためのルールや配慮はしっかり教わりながら、自分のペースで過ごす子どもたちの表情からは「ここに居場所がある」という安心感が伝わります。馬は元競走馬を含む9頭。大人向けのホースリトリートも好評です!(野中真規子) 【URL】https://ecfolas.com/

ゆっくり呼吸しながら、体を少し動かすだけで、心が落ち着き、体はどっしりと安定してくる。我孫子市内で開かれている「しらかばヨーガ」は、インド伝統的ヨーガに現代医学を取り入れたクラス。体操、呼吸法、瞑想法を通して、心と体の両方に働きかけます。主宰の福田南さんは我孫子市出身。幼少期からバレエやダンスに親しみ、体を動かすことが好きでした。社会人になり、スポーツジムでヨガをはじめると「ポーズだけでは物足りない」と感じ、歴史や哲学、人体の仕組みまで学べる講座へ。標高5000m級でのヒマラヤ修行も経て、深い学びと実践を重ねてきました。現在、クラスに通うのは30代から60代の男女。南さんは正解を教えるのではなく、参加者が自分の心や体を観察し、気付きを見つけられるよう寄り添います。保育士や、企業でのヨガ講師の経験も活かし「子育てや仕事を頑張りすぎている人が、力をゆるめる時間になれば」と話します。手賀沼のほとりを、犬と散歩する時間もヨガの実践のひとつ。「自然を感じることもヨガ。手賀沼にいると、静かなパワーを感じられます」。1人の心と体が整うことが、やがて世界の調和につながるーーそんな願いを込めて、活動を続けています。(野中真規子)https://yogabyminami.com/
いしい

北海道の実家では山や川に囲まれ、四季を身近に感じていたというオーナー夫妻の奥様・吉田るみ子さん。「手賀沼に導かれたのかもしれませんね」と語る吉田さん夫妻は、2013年、自然を眺めながらゆっくりくつろげる場所として、柏市箕輪の地にカフェをオープンしました。偏食気味なときに筆者が注文するのが「おまかせランチセット」。1日の野菜推奨摂取量350g分をとれるようにと、たくさんの野菜が使われています。訪問した日のランチでは、大根の皮のきんぴらのシャキシャキした歯応えにホッコリ。アジの南蛮漬けは、骨まで食べていただけるようにと2度揚げされ、カリフラワーのポタージュは裏の畑でとれた野菜を使っているとのこと。吉田夫妻の温かいオモイもいただけるような、手賀沼のごとく懐の深いカフェです。(石井 雅子)_【店舗URL】http://tegacafe.web.fc2.com/

新緑が眩しいゴールデンウィーク、白装束の人々が列をなして歩く姿を見たことはありませんか?これは旧沼南町を中心とした東葛地域で約200年続く「東葛印旛大師」という巡礼行事です。弘法大師(空海)を祀った厨子を各村々へ順に送り届けることから、「送り大師」とも呼ばれています。毎年5月1日から5日間、四国霊場を模した88の札所と16の掛所を巡拝。その規模は四国以外では国内最大級を誇ります。この壮大な行事の始まりには、高柳村の大久保氏と長全寺の住職が主導的な役割を果たしたと伝えられています。 各地の巡拝行事が衰退するなか、送り大師はなぜ存続しているのでしょうか。その理由は札所の場所から読み解くことができます。手賀沼流域や大津川沿いに点在する札所は、かつては村同士の情報交換や交流の場でもありました。また、真言宗に限らず他宗派の寺社も札所に含まれるなど、寛容なネットワークが築かれています。宗教の枠を超え、地域全体を「大きなコミュニティ」として緩やかにつないできた絆。それが、今もなお大切に守り継がれている理由といえるのではないでしょうか。 (石井雅子)(写真提供・撮影:鈴木清之氏) かしわグリーン観光社YouTube動画「200年続く巡礼「送り大師」を体験する旅|柏市」https://youtu.be/wOMWNl6zWk8?si=dtrE4FKk1pJyqD-F 准四国八十八ヶ所東葛印旛大師巡拝(送り大師)公式サイトhttps://sites.google.com/site/tokatsuinbadaishi/home
手賀沼100人会議
#7 丹波道草さん「きれいになった、で終わらせない」
手賀沼100人会議

子どもの頃、毎日のように手賀沼でクチボソ釣りをして過ごしていた丹波さん。汚かった頃の手賀沼も、いまの姿になるまでの経緯も、ずっと見てきました。きれいになった手賀沼を前に、いま常に自分に問いかけている言葉があります。 「この素晴らしい自然を、次の世代にどう残すか」 まずは多くの人に手賀沼を知ってもらいたい。一度訪れてみてほしい。そんな思いから、「手賀沼を中心に文化を発信すること」を始めています。多くの人にとって親しみやすい文化といえば「食」。アビシルベYouTubeチャンネルのレポーターとして、流域のラーメン店や飲食店を紹介しています。 「知る入口」を、誰もが親しみやすい形で用意することもまた、この自然を次の世代へ手渡すための、ひとつの関わり方なのかもしれません。(渡辺れい) アビシルベYouTubeチャンネル ーーーーTEGANUMA 100 とは 自然と文化が重なり合う手賀沼で“人”を通じて「知らなかったこと」を知る時間。 それが「手賀沼100人カイギ」です 昔と今、そして未来、手賀沼が繋げてくれるここにしかないストーリーが始まる。 手賀沼100人カイギ インスタグラム
#7 兼松明日佳さん「“治す”のではなく、“このままでいい”」
手賀沼100人会議

生きづらさを抱える人にとって必要なのは、変わることではないのかもしれない。自身や家族の経験を通して、あすかさんはそう考えるようになりました。我孫子で開所したのは、病院でもカウンセリングルームでもなく、ただの「居場所」でした。 何もしない、ぼーっとできる、曖昧でいられる時間。手賀沼公園の水辺や、船戸の森の中で行う対話は、少しずつ人の心をほどいていきます。 活動の根底には、あすかさんの「専門家ではなく、一人の人として関わりたい」という思いがあります。揺れる水面を眺めながら、葉がそよぐ音を聴きながら、人と人が対等に出会い直す。その関係性こそが、回復のはじまりなのかもしれません。(渡辺れい) 心の休憩処 engawaホームページインスタグラム ーーーーTEGANUMA 100 とは 自然と文化が重なり合う手賀沼で“人”を通じて「知らなかったこと」を知る時間。それが「手賀沼100人カイギ」です 昔と今、そして未来、手賀沼が繋げてくれるここにしかないストーリーが始まる。 手賀沼100人カイギ インスタグラム

「ただモノを売っているわけじゃないんです」深山さんはそう語ります。手賀沼畔に生まれ、水辺で遊んで育ちました。就職を経て地元に戻り、地場のお米を使った手作りおかき屋さんを開業したものの、初めはうまくいきませんでした。 落ち込んで、手賀沼の水面をぼんやり眺める日々。そこで気づいたのは、この土地の“人と人との距離の近さ”。ごまかしがきかない。だからこそ、続ける意味がある。不器用でもいい。静かに、誠実に続けること。 今では誰もが名前を知る商品に。この土地で続けるということは、人とのあいだに信頼を積み重ねていくことなのかもしれません。(渡辺れい)深山のおかき商店インスタグラム 地域NEWSサイト号外NET掲載記事 ーーーーTEGANUMA 100 とは 自然と文化が重なり合う手賀沼で“人”を通じて「知らなかったこと」を知る時間。 それが「手賀沼100人カイギ」です 昔と今、そして未来、手賀沼が繋げてくれるここにしかないストーリーが始まる。 手賀沼100人カイギ インスタグラム
#7 福田南さん「静けさが、偶然を引き寄せる。」
手賀沼100人会議

南さんにとって、手賀沼の湖畔にある静けさは、ただの風景ではありません。 「心の内側を眺める時間が、セレンディピティを高めるんです」 セレンディピティとは「予期せぬ幸運を掴み取るチカラ」のこと。手賀沼で育ち、小学生の時に、環境をテーマにした市民ミュージカルに出演。保育の現場を経て、インドやチベットへヨガの修行へ。さまざまな経験を重ねたのちに、手賀沼で彼女が見つけたのは、「静寂」という価値でした。何かを足すのではなく、削ぎ落とすことで見えてくるもの。手賀沼は、そんな内省の場としての可能性を持っているのかもしれません。(渡辺れい) しらかばヨーガ ホームページ ーーーーTEGANUMA 100 とは 自然と文化が重なり合う手賀沼で“人”を通じて「知らなかったこと」を知る時間。それが「手賀沼100人カイギ」です 昔と今、そして未来、手賀沼が繋げてくれるここにしかないストーリーが始まる。 手賀沼100人カイギ インスタグラム
#7 関口隆彦さん「水辺遊びの記憶が、まちへの愛着になる。」
手賀沼100人会議

子どもの頃、手賀沼で遊んだ記憶があるかどうか。ガサガサやタナゴ釣り、田んぼや水路での原体験。それが、大人になったときの「地域との距離」を決める、と関口さんは言います。 実際、水辺では、「見る」だけでなく、「触る」「入る」「釣る」「聞く」「嗅ぐ」といった多感覚の体験が起きやすく、複雑な環境のために、多様な遊びが生まれます。水辺体験は、その場所への愛着や自然とのつながり意識を育てやすいことも、科学的に報告されています。 つまり、関口さんたち我孫子青年会議所主催の「Enjoy!手賀沼」は、単なるイベントではありません。体験を経て「じゃあ自分はどう手賀沼に関わろうか」と考え、一度手賀沼を離れてもまた戻ってきたくなる、そんな愛着を育てる「場」なのです。(渡辺れい) 我孫子青年会議所ホームページ https://www.abiko-city.jp/jc/inquiry/index.htmlーーーーTEGANUMA100とは 自然と文化が重なり合う手賀沼で“人”を通じて「知らなかったこと」を知る時間。それが「手賀沼100人カイギ」です 昔と今、そして未来、手賀沼が繋げてくれるここにしかないストーリーが始まる。 手賀沼100人カイギ インスタグラム






























